書き手:真柴 渉(トビラの会 カウンセラー)
夫婦や恋人に「SMをしてみたい」と伝えるときは、落ち着いて話せる時間に、「してほしいこと」ではなく「興味がある」という自分の気持ちとして打ち明け、先に相手の気持ちを聞いて、その日に答えを求めないことが大切です。始めることになったら、同意・やめる合図・体調の3つを先に決めて、ソフトなものを短い時間から試します。
「何年も一緒にいるのに、今さら言い出せない」「引かれたら、二人の関係が変わってしまいそうで怖い」「打ち明けたいけれど、どう切り出せばいいのかわからない」。長く付き合っている恋人や夫婦だからこそ、言葉にしにくい気持ちがあるものです。
この記事では、恋人・夫婦にSMへの興味を伝える前の準備、切り出し方と言い方の例、相手が戸惑う理由、OKをもらえたときの決めごと、断られたときの向き合い方をお話しします。SMを始めること全体の流れは初めてのSM体験|SMしたい初心者の始め方と安心できる相手の探し方にまとめていますので、あわせてご覧ください。
夫婦・恋人とSMをしてみたいと思うのは、珍しいことではありません
SMへの興味は、恋人や夫婦として長く過ごしてから気づくこともあります。小説や映画の一場面が心に残っていた方、相手に委ねる安心感にふと惹かれた方、もともと持っていた気持ちを言えないまま月日がたった方。どれも珍しいことではありません。
私はSMを、お互いの合意のうえで、相手に少しずつ心を開いていく関係だと考えています。すでに信頼関係のある二人にとって、SMへの興味を打ち明けることは、相手にもう一歩、心を開くことでもあります。
長い付き合いだからこそ、言い出しにくい
出会ったばかりの相手より、長く一緒にいる恋人や夫婦のほうが、かえって言い出しにくいものです。「今までの二人の時間に不満があったと思われないか」「いつもの自分と違う面を見せて、見る目が変わらないか」。守りたい関係があるからこそ迷うのは、とても自然なことです。だからこそ、勢いで伝えるより、準備をしてから伝えるほうがうまくいきます。
恋人・夫婦にSMを伝える前に、自分の中で整理しておくこと
打ち明ける前に、ひとりでできる準備があります。ここが整っていると、相手に聞かれたときにも落ち着いて答えられます。
何に惹かれているのかを、自分の言葉にしておく
「リードしてほしい」「相手を導いてみたい」「言葉のやりとりにどきっとする」。SMといっても、惹かれているものは人によって違います。体の感覚より、気持ちの動きに惹かれているという方も多いものです。中身を自分の言葉にしておくと、相手に「SMって、何をしたいの?」と聞かれても、怖がらせずに説明できます。書き出し方はSMしてみたい・興味がある人が最初にすることでくわしくお話ししています。
自分のNGと、相手に求めないことを決めておく
してみたいことと同じくらい大切なのが、したくないことです。あわせて、「相手にこれは求めない」という線も決めておきましょう。たとえば「痛いことはしない」「跡が残ることはしない」「写真や動画は撮らない」。先に線を示せると、相手は安心して話を聞けます。
「断られてもいい」と思えるかを確かめる
伝える前に、いちばん大切な問いを自分にしてみてください。「相手が断っても、二人の関係を大切にできるか」。答えが「はい」なら、伝える準備はできています。断られることを受け止められない気持ちのまま伝えると、言葉の端に「わかってほしい」という圧が出てしまい、相手は断りにくくなります。
SMしたい気持ちの伝え方|切り出すタイミングと言い方
準備ができたら、いよいよ伝えます。切り出し方で気をつけたいのは、次の4つです。
話すのは、落ち着いた時間に
寝室で雰囲気が高まっているときや、お酒が入っているときは避けましょう。その場で答えを迫られているように感じやすく、相手は本当の気持ちを言いにくくなります。おすすめは、二人ともゆとりのある休日のくつろいだ時間や、散歩しながら話せる時間です。疲れている日、けんかのあと、どちらかが忙しい時期も避けます。
「してほしい」ではなく「興味がある」と気持ちとして伝える
最初のひと言は、お願いではなく打ち明け話にします。「実は前から、少し興味があることがあって」「あなたにだから話せるんだけど」。自分の気持ちとして伝えれば、相手は「何かを求められた」ではなく「大切なことを話してくれた」と受け取りやすくなります。
先に相手の気持ちを聞く
自分の希望を細かく話す前に、「こういう話を聞いて、どう思う?」と相手の気持ちを聞いてください。驚いたなら驚いたで、それが今の正直な気持ちです。相手の言葉を最後まで聞き、言い返さないことが、次の会話につながります。
その日に答えを求めない
「すぐに返事はいらないから、考えてみてくれたらうれしい」と添えて、その日は終わりにしましょう。相手の気持ちが追いつくまで待つことも、SMの大切な一部です。少し時間をおいてから、相手のほうから話題にしてくれることもあります。
言い方の例|言いがちな言葉と、伝わりやすい言い方
| 言いがちな言葉 | 相手が受け取りやすい気持ち | 伝わりやすい言い方の例 |
|---|---|---|
| 「SMしてみたいんだけど、いい?」 | その場で答えを迫られている | 「少し興味があることがあって、話を聞いてもらえるかな」 |
| 「いつものだと物足りなくて」 | 今までの二人の時間を否定された | 「今のままの二人も好き。そのうえで、試してみたいことがある」 |
| 「こういう動画みたいなことがしたい」 | 激しいことをされそうで怖い | 「痛いことや、嫌なことはしない。やめたいときはすぐやめる」 |
| 「あなたはMっぽいと思う」 | 役割を決めつけられた | 「どんなふうに感じるか、あなたの気持ちを聞かせてほしい」 |
| 「嫌なら別にいいけど」 | 断ったら気まずくなりそう | 「断ってくれても大丈夫。あなたとの関係のほうが大事だから」 |
言い方の正解はひとつではありません。大事なのは、相手の気持ちを置き去りにしないことと、断る自由を最初から伝えておくことです。
SMを提案されたパートナーが戸惑う理由
打ち明けた相手が驚いたり黙ったりしても、それはあなたを拒んでいるとは限りません。提案された側の頭の中には、たとえばこんな不安が浮かんでいることがあります。
- 今までの二人の時間に、不満があったのでは:自分では足りなかったのかと、自信をなくしてしまう
- 痛いことや怖いことをされるのでは:SMという言葉から、動画や小説の激しい場面を思い浮かべてしまう
- 役割を決めつけられるのでは:自分がSかMかを勝手に決められ、それに合わせなければならない気がする
- 断ったら関係が悪くなるのでは:相手を傷つけたくないあまり、本当の気持ちを言えなくなる
この不安の一つひとつに、先回りして答えておくと、相手は安心して考えられます。「今の二人が好きなことは変わらない」「嫌なことはしない」「役割はあなたの気持ちを聞いてから」「断ってもいい」。前の章の言い方の例は、この4つの不安に答える形になっています。
OKをもらえたら|夫婦・カップルでSMを始めるときの決めごと
相手が「少しなら試してみてもいい」と言ってくれたら、すぐに始めるのではなく、まず二人で決めごとをします。恋人や夫婦のように信頼している相手でも、ここは省きません。
- 同意はそのつど確かめる:夫婦や恋人でも、同意は毎回のものです。「前回よかったから今回も」ではなく、その日の気持ちを確かめます。途中で気持ちが変わったら、やめてかまいません
- やめる合図(セーフワード)を決める:ふだんの会話では使わない言葉と、声を出しにくいときの手の合図を決めます。合図が出たら、理由を問わずすぐにやめるのが約束です。決め方は、近く別の記事でくわしくお話しする予定です
- 体調とお酒に気をつける:持病やけがは事前に伝え、体調のすぐれない日やお酒が入っているときはしません
- ソフトなものを、短い時間から:最初は、目隠しや言葉のやりとりのような、体に負担の少ないものを少しだけ。続けるかどうかは、終わってから二人で話して決めます
- 終わったあとに、気持ちを確かめ合う:「どうだった?」「嫌なところはなかった?」と声をかけ合います。終わったあとのケアについても、別の記事でくわしくお話しする予定です
ソフトなものの選び方はソフトSMのやり方と種類、種類の全体像はSMプレイとは?種類一覧と初心者の始め方にまとめています。決めごとの具体例はSM初心者の始め方の「初めてのSM体験の前に決めておきたいこと」もご覧ください。
夫婦ならではの気づかい|日常と分ける
一緒に暮らしている二人は、SMの時間と日常の境目があいまいになりがちです。SMの中での役割を、家事や家計、ふだんの会話に持ち込まないこと。始める時間と終わる時間をはっきりさせること。お子さんやご家族と暮らしているなら、時間や場所、道具の置き場所にも気を配ること。こうした区切りがあると、ふだんの二人の関係も、SMの時間も、どちらも大切にできます。
恋人・夫婦にSMを断られたときの向き合い方
勇気を出して伝えても、相手が「ごめん、それはできない」と答えることもあります。それは、あなたという人を否定したのではなく、今の相手の正直な気持ちです。
- まず、正直に答えてくれたことにお礼を言う:断るのも勇気のいることです。責めたり、理由を問い詰めたりしないでください
- 何度も頼まない:くり返し頼むと、相手は断ること自体がつらくなります。話題にするかどうかは、相手にゆだねます
- 「SM」という形にこだわらない:あなたが惹かれていたのが「委ねる安心感」や「言葉のやりとり」なら、二人が心地よいと思える形で、ふだんの関係の中に近いものが見つかることもあります。嗜好は、二人の関係の中で少しずつ形を変えていくものです
- 二人だけで抱えきれないときは、相談先を持つ:気持ちのすれ違いが大きく、二人の関係そのものが苦しくなってきたら、夫婦や恋人の悩みを聞く専門の相談先に、二人で話を聞いてもらう方法もあります
そして、断られた気持ちを、パートナーに黙って外で満たそうとすることはおすすめしません。二人がこれまで築いてきた信頼を、取り返しのつかない形で損なってしまうからです。SMは、信頼の上にしか成り立たない関係です。目の前のパートナーとの信頼を、何よりも大切にしてください。
これからパートナーを探す方へ|最初から嗜好を分かち合える相手と出会う
ここまでは、すでに恋人やパートナーがいる方に向けてお話ししてきました。一方で、いまパートナーがいない方や、独身で、これからは最初から嗜好を分かち合える相手と出会いたいと考えている方もいらっしゃると思います。「付き合ってから打ち明けて、受け入れてもらえなかったら」という不安を、出会う前の段階で小さくしておく方法もあります。
トビラの会は、SMやドミサブに関心のある20歳以上の方どうしを、事務局が間に入ってご紹介する仲介型のマッチングサービスです。2010年頃から活動しており、登録会員数は延べ4,700名以上(2026年9月時点)です。ご入会前に、男女とも全員とご面談をしています。お相手も入会前に面談を受けた方なので、「いつ、どう打ち明けよう」と悩むところから始めなくてかまいません。
- 入会前に、男女とも全員とご面談:面談専用の公式LINEを使った映像通話で、ご自宅から受けていただけます。面談は無料です
- 始めるかどうかは、面談のあとで決めてよい:お話を聞いてから考えていただいてかまいません
- 男性は身分証で本人確認:お名前・ご住所・ご年齢に加えて、今のお仕事の内容もうかがっています
- 基本的に写真がなくても始められます:ご紹介は、面談でうかがったお話をもとにしたプロフィールで進みます
- お断りは事務局からお伝えします:ご本人が直接断らなくてかまいません。いつでもやめられます
面談は、手間に感じるかもしれません。けれど私どもは、面談を「安全のための入口」だと考えています。お相手も入会前に面談を受けた方である。そう思えるだけで、初めての一歩の不安はずいぶん小さくなるはずです。女性の方は、女性がSMを初めて体験する前にや、SMの相手との初対面が怖い女性へも読んでみてください。
女性は入会金・年会費ともに無料です(くわしくはM女性のご入会案内)。男性の料金はご入会案内をご覧ください。※お約束のキャンセルや無断での不参加など、会員規約(トビラの会)に定める場合には違約金をいただくことがあります。
夫婦・恋人のSMについてよくあるご質問
Q. 結婚して何年もたつ夫婦でも、今からSMの話をしてよいのでしょうか?
A. はい、遅すぎるということはありません。長く一緒にいる二人だからこそ、落ち着いて話し合えることもあります。「今の二人が好きなことは変わらない」と最初に伝え、相手の気持ちを先に聞くところから始めてみてください。
Q. 恋人にSMの話をするのに、いいタイミングはありますか?
A. 二人ともゆとりがあり、落ち着いて話せる時間がいちばんです。雰囲気が高まっているとき、お酒が入っているとき、疲れている日やけんかのあとは避けましょう。その日に答えを求めないことも大切です。
Q. パートナーからSMをしてみたいと打ち明けられました。どう受け止めればいいですか?
A. まずは、打ち明けてくれた勇気を受け止めてあげてください。そのうえで、すぐに答えを出す必要はありません。何に惹かれているのか、何をしたくないのかを聞いてみて、気になることは正直に伝えてかまいません。断ることも、あなたの大切な選択です。
Q. 恋人にSMを断られました。別れたほうがいいのでしょうか?
A. 断られたことだけで、関係のすべてを決める必要はありません。SMへの興味は、二人の関係の大切な一部ではあっても、すべてではないはずです。時間をおいて、あなたが惹かれていた気持ちの中身を二人でゆっくり話してみてください。
Q. いまは独身で恋人もいません。最初からSMの嗜好を分かち合える相手と出会えますか?
A. トビラの会では、男女とも入会前にご面談をし、そのお話をもとにしたプロフィールでご紹介しています。面談は無料で、始めるかどうかは面談のあとで決めていただいてかまいません。
まとめ:恋人・夫婦にSMを伝えるときは、相手の気持ちを先に
夫婦や恋人にSMへの興味を伝えるときは、自分の中で「惹かれていること」と「NG」を整理し、落ち着いた時間に、お願いではなく打ち明け話として伝えます。先に相手の気持ちを聞き、断る自由を伝え、その日に答えを求めないこと。OKをもらえたら、同意・やめる合図・体調を決めて、ソフトなものを短く。断られたら、責めずに二人の関係を大切にしてください。
そして、いまパートナーがいない方には、最初から嗜好を言葉にして伝え合える出会い方もあります。「この人になら心を開いてもいい」と思える相手と出会えるように、私どもがお手伝いします。まずはお話を聞いてみるところからでかまいません。
