20代はまだゆっくりとした時間の流れかもしれません、30代になると徐々に時の流れを早く感じ、30代後半からさらにスピード感が増します。40代以上になるとその時間の体感速度は、本当に早く、あっというまにシニア世代といわれる「高齢世代」に向かっていきます。
先日、ある親戚のおばあさんのお見舞いに行ってまいりました。
幸運にも事故などにも巻き込まれず、長生きされている90代半ばの方です。
8ヶ月前に会ったときには、まだ私のことを覚えてくれていましたが、今回お会いしたら、もう覚えておられませんでした。記憶という記憶がなくなり、おそらく嫌なことも、楽しかったことも記憶がほとんどない状態なのかなと思いました。
ものすごく穏やかな表情をされており、死期が近いのかもしれないと思い、悲しくもありましたが、その温かみの溢れた表情を見て私の心も温かくなりました。
死期が近づくに連れて、人は記憶を無くします。
人生には、楽しいことも、嫌な気持ちになることも、喜びも、悲しみも、様々な感情の揺れがあると思います。その経験値が重なり、その人となりを作っていくものだと思います。学校を卒業し、社会人となり様々な方とコミュニケーションをとらなければならなくなる時期から、ずっと喜怒哀楽は続きます。嫌なことが連続する時期もあれば、幸運な時期がずっと続く場合もあります。タイミングやステージによってそれは変わってくると思います。
楽しい思い出をどんどん作りたいとする一方で、許せざる「こと」や「もの」も増えてくるのが人生です。
しかし、老後という人生の終期に近づくと、悲しかったことや嫌だったこと、許せないことも忘れていきます。だからこそ、おばあさんのように穏やかな表情になると思いました。そしていずれ、楽しかったことも忘れ、記憶の大半をなくし、穏やかに最後を迎える気がします。
嫌なことも悲しかったことも許せないことも忘れるのであれば、人生を思いっきり生きたほうがいい。
人は、自ら動けば動くほど、他人とのコミュニケーションが深く広くなるものです。広くなればなるほど、自分とは合わない人と会うこともたくさんありますし、嫌な思いをすることもたくさん出てきます。騙されることももちろんあるでしょう。しかし、その一方で、楽しみや喜びも、マイナスな感情以上に増えていきます。
いずれ嫌なことを忘れるのであれば、思いっきり生きて、楽しい思い出をたくさん創っていくべきです。おばあさんは、私にそれを伝えたかったのかなと思いました。
人生の戦略を改めて考え直す、よいきっかけとなりました。